2012年10月13日土曜日

もうひとりのライヘンバッハ



前回書いた「屋上のシャーロックは偽者なのでは(http://kaoruco.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html#!/2012/10/blog-post.html)」という仮説、
そのままだとシャーロックが人を利用して殺すことになってしまい、さすがにBBC放送の倫理的にねえよなことになってしまうんじゃないかという問題があったので、
この点を踏まえて再考した所、もうひとつの可能性にたどり着きました。

もう一度最初から検証してみます。

まず、シャーロックの不名誉のきっかけとなるのが、誘拐された少女がシャーロックを見て悲鳴を上げるシーンです。彼女にシャーロックに対して恐怖を抱かせるようなイメージを植えつける方法はいくつかあるでしょうが、
確かにあれはシャーロックを見て単に怖がると いうよりは、彼こそが犯人だと言っているよう なリアクションでした。
確実にこのリアクションを引き出すために、モリアーティーはシャーロックそっくりに整形した男を用意したのではという可能性が浮かびます。
周到なモリアーティーは、自分の目すら騙される程の、精巧なクローンを作りあげたかもしれません。
そしてその存在に気付いたシャーロックは、この自分の偽者を利用して逆にモリアーティーを欺く事 を考えます。


つまり、屋上でモリアーティーと対峙し、飛び降りたシャーロックは、偽者だったのではないか。

本物のシャーロックはバスカヴィルの時のように監視カメラの映像で屋上の二人を監視しつつ、台詞はBluetoothなどで偽のシャーロックに指 示を送る。 (マイクロフトの後ろ盾があればロンドン中の監視カメラを自由に出来るのです>SE1Ep1)

首から上の整形は完璧でも、身体的特徴、例えば指紋や指の爪の形などは隠せないかもしれません。極力後ろ手を組んでジムに手を見せないようにしているようにも見えます。

ジムに「一人にしてくれ」と頼んだあと、シャーロックが反撃に出るまでに「quick」なシャーロックにしては随分間がある気がします。
 この時点ですでに、ジムはリチャードブルック ではない、コードは存在しない、どの様にタワーロンドン強盗をしたのか、シャーロックが落ちることを拒否した場合に誰に危険が及ぶのか、という事を白状させる事に成功したので( おそらくシャーロックはこの映像を証拠として録画している)、当初のプランではここでもう飛び降りてもいいはずだった。
しかしジムが口を滑らせたのでプラン変更を本物のシャーロックが彼に説明し ていた間なのでは。

ここからシャーロックは自分の手の内を明かすことで、ジムを威圧する手に出ます。
 ジムの計画などすでにお見通しで、「全てにおいて周到に準備している」、「僕は君」のように手段を選ばない人間なので、勝つためには人を利用して「焼き尽くす」こともする、だから地獄で会おう、僕は「天使ではない」のだからと。

最初はただのはったりだと一蹴したジムが、急にそれを信じたのはシャーロックの瞳をまじまじと覗き込んだ瞬間です。 瞳の虹彩はいわば指紋です。整形ではごまかせないし、コンタクトでごまかしても太陽光の下至近距離で見れば違和感に気づくでしょう。
それでジムには彼が偽者であるということが、つまりシャーロックが自分より一枚上手であったと気づいたのです。

では何故ジムは自殺したか。

ジムはありていな言い方をすれば友達が欲しかっただけなんだと思うのですが、彼は孤独の王であるので周りには当然自分を「理解してくれる人」がいない。シャーロックの境遇もこれに似ているけれど、彼は天使の側につくふりをして凡人と付き合っているからつまらない。
ジムはシャーロックを自分のところまで落としたかっ た、そして彼に自分の同胞になって欲しかったのでしょう。
シャーロックが握手をした者は皆死ぬ、そしてジムが死ぬことで、シャーロックは偽者を殺す以外の手を絶たれた。
そうしてシャーロックが孤独の王になるのです。それがジムの望みだった。
だから偽者の目を通してシャーロックに礼を言ったのです。

ここまでが前回の記事で書いた仮説です。

しかし、本当に偽者をシャーロックが殺せば倫理的に問題な上、偽者が金のためだけにそこまですると考えるのも苦しい。

それなら、あの怪しげなゴムボールやゴミトラックのトリックを、最終的には偽者のシャーロックを生かすために使った事にすればいいのではないでしょうか?

ただトリックで助かると分かっていたなら余計に、偽者がジョンとの電話であんなに危機迫った泣きの演技が出来るものでしょうか? 喋り方まで真似て。役者じゃあるまいし。そう、金のためなら何でもやるような役者がいれば話は別なのですが。



金のためなら何でもやる役者、聞き覚えのあるフレーズではないですか。



もし、ジムがリチャードブルックという人物を無から創造したのではなく、「実在する」リチャードブルックという売れない役者のアイデンティティと入れ替わっただけなのだとしたら。

そう、偽者のシャーロックの正体は、リチャードブルック本人なのではないか。

なんてややこしい。つまり金に困っている〈本物の〉リチャードブルックという役者にジムが大金の報酬と引き換えにシャーロックの顔に整形して誘拐犯の演技をしてほしいと持ちかける。→今度は逆にシャーロック側が〈本物の〉リチャードブルックに接触、大金の報酬と引き換えに(金のために人を裏切る人間は何度でも裏切るでしょう)シャーロックのふりをしてビルから飛び降りてほしいと持ちかける。ただしトリックを使って必ず命は助けると。

では最初から助けるつもりならなぜ偽者に飛び降りさせたのか。
ジムにリチャードが飛び降りたと思わせるのが、最初の計画だったのです。

まずリチャードに「凡人シャーロック」のふりをさせ、ジムにコードの件等を自白させます。
その後機を見て自分はリチャードブルックだとジムに証したあと、ジムのシナリオを終わらせるために飛び降ります(スナイパーを止めるためには落ちたところを見せればよい)。
ジムからすれば、シャーロックが(世間的に)落ちればゲームは終わりであると同時に、もし死体がリチャードブルックのものだとバレれば計画は失敗だと思うでしょう。これでジムは手も足も出ない状態になるわけです。

シャーロックの台詞に注目してください。

「リチャードブルックを殺してモリアーティーを復活させる」

とまさに言っています。

おそらくシャーロックの最初のプランはこうでした。
ジムが中止の方法もあると口を滑らせたのと自殺したのはシャーロックも想定外だったのではないでしょうか。

誘拐事件が起こる前、ジオゲネスクラブのマイクロフトの元にリチャードブルックの暴露記事が載った大衆誌が置いてあり、その時点でマイクロフトはリチャードブルックはモリアーティー絡みだと目をつけていたのだと思います。
おそらくマイクロフトはどこかの時点で本物のリチャードブルックの居場所を突き止めていた。

しかしジムがリチャードブルックに成り代わっているというのはシャーロックがキティの部屋に行った時点で気付き、それを利用することを思いついた。
ジムがジョンに見せたブルックの資料はジムが自分の写真を合成して作ったものでしょうが、リチャードブルックは存在するので、ググっても名前がちゃんとでるだろうし、出演作品のクレジットに名前が載っていれば不自然ではありません。(ただし売れてないので映像をさがすのは困難というのがミソ)

でも、リチャードブルックって、ライヘンバッハにかけた冗談って言ってなかった?いやいや、

この世に偶然がないという人は退屈な人生を送っているんだろう(SE2EP2)」

それもまた偶然。でもシャーロックは「何でも意味があると考えたがる、凡人シャーロック」を演じるためにとぼけてみせたのです。


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